新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の治療薬の現状

医薬品・医療
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2020年5月10日更新 

 新型コロナウイルス感染症についての何種類か治験が行われていますので治療薬の現状についてまとめていきたいと思います。

現状

 現時点では、新型コロナウイルス(COVID-19)の薬物療法に関する知見は限られています。
 2020年5月1日にFDAにてレムデシビルが緊急使用許可がでたことにより、日本でも特例承認への動きがあります日本でも2020年5月7日に特例承認されました。また、アビガン(ファビピラビル)が5月中の承認を目指して動き出していると報道もありました。

ファビピラビル(アビガン)

 もともとはインフルエンザ治療薬として日本で承認されていた薬剤になります。ファビピラビルは使用において制限があり、下記の条件が満たされた場合のみ使用できる薬剤でした。

・他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分な新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生した場合

・本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合

 販売していた富士フィルムも国の備蓄分を生産しているのみで市場には流通していない薬剤でした。

作用機序

 生体内で変換された三リン酸化体 (T-705RTP) が、ウイルスのRNA ポリメラーゼを選択的に阻害するものであることから、インフルエンザウイルス以外のRNA ウイルスへも効果を示す可能性がある。

海外での臨床報告

 中国からカレトラ群45人と比較してファビピラビル投与群35人ではウイルス消失時間が短縮され、画像所見の改善も早かったという非ランダム化比較試験が報告されている。

国内での臨床報告

 国内での臨床試験、治験が進行中になります。症例報告による使用例に関しては日本感染症学会のホームページ等に情報があります。

投与時の注意点

 動物実験において、本剤は初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊
婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。

現状

 症例が集まってきており、2020年5月中に承認するために動いていると報道があります。

レムデシビル(ベクルリー)

 もともとはアメリカのバイオ医薬品大手のギリアド・サイエンシズ社により、エボラ出血熱など新興感染症治療薬として開発されていた抗ウイルス薬である。

作用機序

 RNAウイルスに対し広く活性を示すRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害する。

臨床試験

 レムデシビルを使った臨床試験は、米国内の47カ所の医療機関および、日本の国立国際医療研究センターを含むアジアやヨーロッパにある21医療機関でも実施されている。

 ギリアドが行っている臨床試験では、5日投与群で64.5%(129例/200例)が、10日投与群で53.8%(106例/197例)が臨床的回復に到達しています。

 また、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が行った臨床試験では、レムデシビルを投与された患者は、プラセボ群比較して症状が続く期間が15日から11日に縮んだといいます。

投与時の注意点

 肝機能障害、下痢、皮疹、腎機能障害などの頻度が高く、重篤な副作用として多臓器不全、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧が報告されている。

現状

 アメリカでは2020年5月1日に国食品医薬品局(FDA)よりレムデシビルをCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)で使用できるように緊急使用が許可されました。 

 日本では2020年5月2日に、医薬品医療機器等法の政令改正を持ち回り閣議で決定しました。これにより、通常よりも早期に承認できる「特例承認」の適用対象に新型コロナウイルス感染症を効能・効果とする医薬品が加わりました。
 また、ギリアド・サイエンシズは2020年5月4日にレムデシビルを日本国内で承認申請したと報道がありました。承認までは1週間程度かかる見通しとのこと。

 2020年5月7日に日本でも特例承認されました。

シクレソニド(オルベスコ)

 シクレソニドは気管支喘息に適応となる吸入ステロイド喘息治療剤である。

作用機序

 シクレソニドの持つ抗ウイルス作用と抗炎症作用が重症化しつつある肺傷害を改善させるのではないかと報告されている。

海外での臨床報告

 現時点では、臨床的評価に関する公開された情報はない。韓国にて軽症の COVID-19 に対する臨床研究が進行中である。

国内での臨床報告

 症例報告による使用例に関しては日本感染症学会のホームページ等に情報がある。現在、国内での臨床試験が進行中である。

ロピナビル・リトナビル(カレトラ)

 HIV感染症に適応がある薬剤です。

作用機序

 HIV-1 に対するプロテアーゼ阻害剤として有効性が認められている。in vitro や動物モデルでMERS への有効性が示されており、COVID-19 に対してもバーチャルスクリーニングで有効である可能性が示されている。

海外での臨床報告

 中国で重症COVID-19患者199名を対象としたロピナビル・リトナビルと無投薬のランダム化試験で、臨床的改善率、28日死亡率いずれも有意差が見られなかったとの報告がある。

国内での臨床報告

 症例報告による使用例に関しては日本感染症学会のホームページ等に情報がある。

ヒドロキシクロロキン(プラケニル)

作用機序

 クロロキンと類似した構造で抗炎症作用、免疫調節作用をもっている。In vitroではクロロキンはレムデシビルと同等の新型コロナウイルスの抑制効果が示されている。

海外での臨床報告

 単剤もしくは併用療法としての臨床試験が進行中である。フランスにおける COVID-19 患者 36 例に対する非ランダム化比較試験では、ヒドロキシクロロキン投与群において研究参加 6 日後のウイルス量が有意に低かった。ただし、フランスからの別のランダム化比較試験(従来治療群 77 例 vs ヒドロキシクロロキン 84 例)では軽症〜中等症の患者において予後に差がなかったとする査読前論文も掲載されている。

国内での使用実績

 症例報告による使用例に関しては日本感染症学会のホームページ等に情報がある。

投与時の注意点

・クロロキンは国内では使用できないが、ブラジルでの臨床研究ではクロロキン高用量群(600mg 1日2回 10日間)は低用量群 (1日目 450mg 1日2回、2〜5日目 450mg 1日1回)と比較して、QT延長(25%)、死亡(17%)が多かったと報告されている。 

・ヒドロキシクロロキン投与においてもQT延長が問題になることがあり、投与前に心電図でのQT延長、家族歴、QT延長の原因となる薬剤投与の有無を確認し、投与開始後96時
間は心電図モニタリングを行うことが望ましい。

・アジスロマイシンとの併用が有用との報告もあるが、高用量クロロキンとの併用で心臓死による死亡率を高めるとの報告があり併用については慎重に判断すべきである。

トシリズマブ(アクテムラ)

作用機序

 ヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体で、インターロイキン-6(IL-6)の作用を抑制し免疫抑制効果を示す分子標的治療薬である。

海外での臨床報告

 中国から20人の患者に対して通常の治療に加えてトシリズマブを投与した結果、酸素需要量の減少、肺炎の画像所見の改善がみられたと報告されている。対照群のない単群での研究であるが、重症度の高い20例(重症度をマッチさせた推定死亡率20%)が全員生存している。

国内での使用実績

 現時点で国内で新型コロナウイルス感染症に使用された報告はないが、中外製薬が国内第III相臨床試験を実施中である。

COVID-19に対する他の治療薬

 COVID-19 に対する治療に使用できる可能性のある治療薬にはインターフェロン、カモスタット、ナファモスタットなどがあるが、それらの効果や併用効果に関しては今後の知見が待たれています。

まとめ

 色々な臨床試験のデータが出てきており、アメリカにおいては緊急使用許可が出てきたのと、日本でも国による承認が待たれている薬剤が出てきています。

 今後も臨床試験の結果の報告が待たれるところです。

参考:http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_200430.pdf

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